阪神・淡路大震災25年スペシャルインタビュー
女優・相武紗季さん (PJT事務局)
「みんなで備える」ことの大切さを伝え、実践し続けていきたい。私の周りの全ての大切な人たちのために 。
ひょうご安全の日推進県民会議(会長:兵庫県知事)では、阪神・淡路大震災から25年を迎えるにあたり、「震災を風化させない-『忘れない』『伝える』『活かす』『備える』」を基本コンセプトに、多彩な事業を展開しています。
その一環として、このたび、震災25年記念事業の成果や、震災の経験・教訓を発信するため、「震災25年特設ウェブサイト」を開設しました。
これらを記念したスペシャルインタビューとして、「阪神・淡路大震災25年総合フォーラム」にご出演いただいた、兵庫県出身の女優・相武紗季さんにお話を伺いました。
阪神・淡路大震災 -私と家族-
▶ 9歳のときに被災されたと伺いました。そのときはどのような状況でしたか。
当時、私は小学校3年生。祖父母、父母と姉の6人で暮らしていました。周囲には全壊の家も多かったのですが、幸運にも私の実家に大きな被害はありませんでした。ただ、家中の家具が倒れ、ひどい有様になっていたことを鮮明に覚えています。特に1階の祖父母の部屋は、倒れた家具で床も見えない状態で、様子を見に行った父は、一瞬、祖父母の死も覚悟したとのことでした。
▶ ご家族はご無事だったのですか。
幸い、家族にけがはありませんでした。祖父母は、当日は掘りごたつで寝ていたのですが、倒れてきたタンスが掘りごたつに引っかかり下敷きになるのを免れたとのことでした。
いろんな人に守られていた。
▶ 当時を振り返って、印象に残っていることはありますか。
大人になって、いろいろな人が子どもたちを守ってくれていたんだと強く思い返されます。実家が断水したので毎日給水に行っていましたが、祖父の知人からたくさん声をかけてもらい、とても勇気づけられました。また、通っていた小学校に大勢の方が避難されていましたが、私たち児童を励まそうと、大人が楽しませてくれていたことを覚えています。私自身は落ち込んだという記憶はありませんでした。
今、私が取り組んでいること
▶ 震災をきっかけに、ご自身で取り組んでおられることはありますか。
祖父母に倒れてきたタンスの例から、家具固定の大切さを痛感しました。だから、今は全ての家具を固定しています。断水で苦労して水のありがたさや備蓄の大切さも学びましたので、水や食料の備蓄もずっと続けています。実は、当時、自宅のお風呂は毎日水を貯めた状態にしていたのですが、震災の前日に祖父がたまたまお風呂掃除をしていたので、水がない状態になっていました。断水が続く中、祖父がそのことをすごく悔やんでいたことをよく覚えています。
一児の母となって思うこと
▶ ところで、相武さんは子育て中と伺いました。母親となられて何か変化はありますか。
子どもの成長に合わせた備えについても考えるようになりました。例えば、赤ちゃんの時はミルクだけ考えていればよかったですが、そのミルクの量も成長に伴って増えますし、もっと大きくなると、ミルクだけではなくて、エネルギーになって腹持ちしそうな食料も買い足しています。オムツも、必要なサイズがどんどん変わっていくので、注意しています。
また、家の中での安全確保も気にするようになりました。災害はいつ発生するか分からないので、「扉が開かなくなったらどうするか」「子どもと入浴中の場合は、どう身を守って、どう逃げるか」など、色々な場面を想定するようにしています。
▶ 震災時は守られ教えられる立場でしたが、今は親となり、守り教える立場になられました。次世代を担っていく子どもたちや若者に何を伝えたいですか。
体験しなければなかなか分からないこと、聞くだけでは実感が湧かないことも多いと思います。例えば、防災のアトラクション体験をするだけでも全然違います。私も、人と防災未来センターの津波避難体験コーナーを体験させていただきましたが、30センチの津波であんなに歩きにくくなるんだと初めて知りました。体験したことは忘れない。その体験を、楽しめる形で学んでもいいんだと思います。
▶ ご自身のお子さんに対してはどうですか。
私は9歳のときに震災を経験しましたが、自分の子どもが9歳になったら、例えば、自分が通っていた学校等のゆかりの場所に連れて行って、当時の経験や教訓を伝えられたらと考えています。
ふるさと・兵庫の皆さんへのメッセージ
-「みんなで備える」-
▶ 相武さんは、これまで、阪神・淡路大震災の節目の時期や大きな災害が起こった際に、SNSでたびたびコメントされています。震災の経験・教訓の発信についてはどのようにお考えですか。
幸い、仕事柄、私には伝えられるネットワークがあるので、それはぜひ活用したいと考えていますし、私で貢献できることはぜひ貢献したいと考えています。
ただ、「伝える」ということは難しく、受け取る方々にも様々な思いがあります。繊細な問題だと最近特に実感しています。押し付けの発信にならないよう、「防災意識を高く持っていただくために私にできること」という視点で、これからも発信し続けていきたいと思っています。
▶ 相武さんには、昨年度兵庫県が制作した「南海トラフ地震・津波対策啓発動画」にご出演いただきました。今回の総合フォーラムにもご出演いただきましたが、特に印象に残ったお話はありますか。
今回、「世代」や「取組み」が異なるご出演者とディスカッションできたことは、私にとって新しい発見もあり、貴重な経験となりました。
中でも、室﨑先生がおっしゃっていた、「世代を越えたつながりの大切さ」という視点がとても印象に残りました。具体的に『世代連携』をすることが「備える」・「活かす」ことにつながると考えます。
例えば私は、今回のご出演者である神戸学院大学の森本さんが所属する防災女子のSNSで連携することができます。実際に、フォーラム終了後、防災女子さんのツイッターをフォローさせていただきました。活動について、より多くの方々に知ってもらえる機会になれば幸いですし、これからも「様々なつながり」を大切にしていきたいと思います。
▶ 最後に、兵庫県民の皆さんへメッセージをお願いします。
私が今住んでいる東京でも、直下型地震が起こるのではないかと言われています。南海トラフ地震という大きな脅威も迫っています。
私たち一人ひとりができる限り備える。その上で、世代や地域を超えて、自治会や企業の皆さんとも協力しながら、しっかり備えることの重要性を、今回のフォーラムで改めて認識させられました。
だから、自分への誓いの意味も込めて、ふるさと・兵庫の皆さんにも、このメッセージをお届けしたいと思います。「みんなで備える」
聞き手:白石豊(兵庫県復興支援課)
撮影:岩本幸雄(兵庫県広報戦略課)、岡田真裕美(兵庫県復興支援課)