仮設住宅に住むシングルマザーの話(原 郁海)
2月14日、「ウィメンズネット・こうべ」の正井禮子さんに当時(阪神・淡路大震災から1年後)、仮設住宅に住んでいたシングルマザーの方のお話を伺いました。
そのシングルマザーは不便なところにある仮設住宅に住んでおり、赤ちゃんがまだ小さかったため、買い物に行きづらかった
しかし近くに住むおじいさんが、代わりに買い物に行ってやると親切にしてくれた
彼女は「いつもお世話になっているからそのお礼に」と晩ご飯にお家に招き、「いつもありがとうございます、これからもよろしくお願いします」と感謝を伝え、ご飯が終わって帰ってもらおうとするが
親切だったおじいさんが「抱かせろ」と
後日、彼女は涙一つこぼさずに「悔しかった」
それを聞いたある一人の女性は「あなたすぐ警察に届けたの?」「そんな話信じられないわ」と反論
彼女はそこで初めて「そこでしか生きていけないときに、誰にそれを語ればいいのですか」といい涙を流したそうだ
私はメモを取ることが出来なくなっていた
手は膝に置き、小さくうなずきながら正井さんを見つめることしかできなかった
「そこでしか生きていけないときに、誰にそれを語ればいいのですか」
この言葉が忘れられないのだと正井さんが言った時ずっと力強かったまなざしのその奥に、私は悲しみを感じた
取材後半のメモは真っ白だったので何回も録音した音声を聞き返し、メモを取り直そうとしてもなかなかできなかった
しんどいと思った
私は何も関係ない、被災したわけでもないのに
「そこでしか生きていけないときに、誰にそれを語ればいいのですか」
取材から一ヶ月以上たった今でもこの言葉は離れない
<ウィメンズネット・こうべ>
1992年4月、男女平等社会実現のための学びと出会いの場を求めて発足。女性問題に関する学習会のほか、さまざまな思いを持った女性がゆるやかにつながりあえるネットワークづくりや女性のための支援活動を続ける。阪神・淡路大震災以降は、「女性に対する暴力」をなくすための活動、特にDV被害者の支援に力を注ぎ、緊急一時避難施設(シェルター)の運営やDVに関する学習会・サポーター養成講座の開催、高校生・大学生のためのデートDV防止講座などを行っている。
HP:http://wn-kobe.or.jp/