「自主防災組織元気!フォーラム」レポート(上利侑也・石堂航平)
リメンバー117メンバー(現役高校生ながらに防災士の稲澤遥樹さん )の記事で初めて「自主防災組織」を知った。
なんか「自主」とか「組織」という名前を聞くと僕たちの身近ではない存在のように感じる。地域自治会とは違うの?今住んでいる地域にもあるの?防災意識が高まっている今だからこそ、兵庫県の地域の防災対策について実際に聞いてみたい。
2019年12月7日土曜日の午後、僕たちは、リメンバー117の有田編集長と会場のラッセホールへと向かった。
文・写真:上利侑也 石堂航平
参加者は高齢の方が9割? 僕たちと同じ20代は居ない?
「元気!」っていうイベント名だから、アクティブなフォーラムかと思いきや
〈会場内、講演中の様子〉
1)空気が違うようで、なにか覚悟を感じるような入り口。 2)表彰式。どのような活動内容で表彰されたのか分からなかった。僕が勉強不足だからだと思うけど、知りたい。 3)基調講演の始まり。会場は照明が落ち、一気に暗くなる。テーマは「『わがこと意識』で地域防災を考えてもらうために、私たちは何をすべきか」。講師は兵庫県立大学教授で防災学・心理学専門の木村玲欧さん。普段、学生たちにテーマの答えを問うと、「知らんし」と二つ返事。若者の意識の薄さに笑ったのか、木村さんの恒例のネタなのか、参加者はほとんどが笑っている。 4)シャッター音も気を遣いそうな空気。カメラマン初心者の僕は、少しでも場に馴染むため、プロのカメラマンを想像しながら、レンズの視点を上下させたり、格好をつけたりもする。 5)会場後方側に貼っていたポスター。公演中にも関わらず、気を惹かれ、思わずじっくり読み込んでしまう。「阪神・淡路大震災からのそれぞれの時間。この25年、兵庫にしかない25年」という言葉が刺さる。 6)木村さんの言葉を、体ごと聞き取ろうとされている場面。 7)リメンバー117の高校生防災士メンバーのような若者防災士を探そうと見渡すが、見つからない。若者も、ほぼ見つからない。 8)講演と休憩時間が終わり、パネルディスカッションが始まる。テーマは、「地域防災、次の課題はなにか?」 9)パネリスト。東日本大震災でのコミュニティの研究調査を行いながら、いかに若者を地域に巻き込むのかを若者目線で研究されている山村奈津子さん(ひょうご震災記念21世紀研究機構研究員・写真右)10)パネリスト。兵庫防災士会 神戸エリア理事の室崎友輔さん。防災士という専門的な立場から、ワークショップの実例など多くの活動情報を提供されている。 11)「防災訓練はじめの一歩」会場後方に置かれていた防災教科書のような本。初めて見る。いろんなシーンでの防災知識が詰まっていて、パラっとページを捲るだけでも面白いと感じる。もっと広く知ってもらうべき本だと思う。 12)パネルディスカッションの様子 13)「防災訓練はじめの一歩」で特に気になったページ。昨年の岡山県豪雨被害と、実際の活動の事例が紹介されている。
文:上利侑也
・・・・前半が終わり、15分間の休憩時間が始まる。・・・・
一旦、会場ホールから外へ出てみると、
休憩中にも関わらず、賑わっている様子。
しかも、結構多くの方が集まっている。
僕たちも参加してきました!
〈会場外の展示ブースの様子〉
1)VRゴーグルを装着された男性。急に後ろから肩を叩かれた時のように、ドキッと周囲を何度も見回していた。
2)石堂くんがVRを体験。係員さんが体を支えに来るほどグルグルと周り、映像の世界に入り込んでいた。 3)僕もVRを体験。豪雨で、家の裏山が地滑りを始めた。避難せずに居ると、一気に目の前は茶色になった。土砂も、折れた木の幹も迫って来る。バイクなんかも流れてきた。5分ぐらいの映像だったけど、普通の景色から山が崩れるまでも一瞬に感じて、改めて怖いと感じる。 4)ゴーグルを装着されてからずっと同じ方向を見続けていた高齢の女性。地面を物凄い速さで流れる茶色い水を注視されているのだろうか。 5)手で壁を掴むように、左右を何度も確認していた。隣で体験だった僕にも聞こえるような溜め息が聞こえた。 6)近くのお店では売っていなような防災用品たち。 7)重さを体感するための持出し品リュックを背負う石堂くん。1番重い10キロを担ぐように背負った。踏ん張る息の音と苦笑いが見えた。何かに気付くように「あ、無理やわ」というつぶやきも聞こえた。 8)オリジナルの持出し品リュックを作るコーナー。日常で見聞きしてきた備蓄品を選び抜いた。 9)「いざという時に無さそうなもの」と「普段から使い慣れているもの」を分けて用意した方が良いよとアドバイスをくれた参加者の男性。経験や教訓をも知れるこの空間は、勉強になることが多かった。 10)新聞紙は、給水、防風にも使えることを知った。 11)写真撮影を忘れて、備蓄品集めに没頭した。 12)駄菓子屋さんの会計のような計算が始まる。重さの合計がなんと15キロ。
文:上利侑也
参加者に突撃インタビュー
ハシモトさん
「伊丹は激震地と違うから、淡路と違って」 (インタビュー:上利侑也)
「私の地元には防災組織がないねん」と勢い強く仰る。ハシモトさんは淡路市出身・伊丹市在住の女性。「地域によって、対策の動きが違い過ぎるから。地域の対策のヒントが欲しくて。木村さんは対策の情報も毎回新しいし、情報量が多いから毎回来るねん」
同じ県内なのにそんなに違うんですか?「出身の淡路市は、防災組織の動きが大きかったね。運動会に消防車を呼んで放水体験とか、バケツリレーをしたり、町が巻き込まれていたわ。でも、伊丹市は、消防職員さんが行う活動がほとんどで、住民さんの活動は動きが見えにくいの。自主防災組織も無くて、自治会にも私達みたいに嫁いで来た新参者にとっては入りにくい環境かもしれないね」
そんなに離れていない地域同士なのに、なんか勿体無いですね。
「伊丹は激震地と違うからかもね、淡路と違って。でも関係ない、他人事じゃないからね」。
パネリストの川村さんのお知り合いの3名の方
「ぜひぜひ、これからも活動を期待していますよ」 (インタビュー:石堂航平)
はじめてのインタビューで緊張している僕を優しく見守ってくれていた。
講演の際に、“若い人が地域で行う防災活動に参加しない”という言葉を聞いて皆さん共感しているように思えましたが、どうですか?と尋ねた。
頷きながら「私たちの地域もそうです」とすぐ答えが返ってきた。
その後に「私ら阪神・淡路大震災震災を経験して、気になるから自主防災組織に所属しているけど、たしかに若い人は少ない。でも……、それなりに」と続いた。
震災を経験していないから若い人が参加しないのは仕方ないと聞こえる反面、地域の防災活動にもっと積極的に参加してほしいとも聞こえる少し寂しそうな言い方だった。
「大学生だったら阪神・淡路大震災震災を経験していないでしょ?」とお話していると、僕自身に興味を持ってくれた。その後に自分のこれまでの活動の経緯を話したら、3人ともすごく嬉しそうな表情だった。「ぜひぜひ、これからも活動を期待していますよ」
「やっぱり、それが伝えていく一番の方法ですよね」
「これからも頑張ってね」。
カタオカさん
「時期とか関係なく防災意識を持ってほしい」 (インタビュー:石堂航平)
みんなが帰っていく中、最後まで防災グッズの展示をじっくり見られていた。
「今日は、木村玲欧先生の講演を傾聴するために来ました。私自身、阪神・淡路大震災を経験しているので関心がありました」。
このあと逆に、僕がカタオカさんからいろいろ質問されていました。自分自身の知識不足のためお話していても分からないことが多かった。
そこで素直に、僕は震災を経験していないのでこれからどうしていけばいいか教えてくださいと聞くと「そうですね、ルミナリエなど1月17日に近くなると震災に関係するイベントが多くなり、震災のことを思い出すのも大切ですが、時期とか関係なく防災意識を持ってほしい」とのこと。
たしかに震災を経験していない僕たちは、1月17日が近づくにつれ震災・防災の大切さを、テレビ・新聞から情報を得て少しは意識するけど、1月17日より以前は防災などを意識していない。地震はいつ来るか分からないのに。カタオカさんが教えてくれた話から、きっと震災を経験している世代にとって当たり前のことを僕らの世代は普段考えていないんだと思った。この機会に改めて気づきました。
ミカドさん・タケオさん
「防災って、メインじゃないからこそ難しいよね」(インタビュー:上利侑也)
西宮市在住の60代お二人。買い物中に偶然会った時のような明るさと、大きめの声でお話した。「若者に声をかけてもらえるなんて〜ワハハハハハ」って、なかなか本題に入りにくい・・・。と思いながら、メモ帳を開くと「あのね、」とミカドさんが暗めの声で話す。
「住んでいる地域の自治会の防災意識に不安を感じているの。自治会には5、6年前から参加されているけど、ずっと防災組織は無いの」と、地域の不安を話して下さるミカドさん。続けてタケオさんも「小学校の防災学習も、昔の写真を展示するだけで、内容が乏しく感じる。子どもにはもっと多くのことを伝えたいのに。地震から3年経った時に長野から来たから、、、」と話して下さる。「やっぱり、自治体って災害対策がメインじゃないから難しいよね。どうしても、二の次なの。でも、若者も関わってくれている地域組織は、防災にも積極的みたい」「うちらのところも若者が来て欲しいなぁ」「今日は、若者の存在の大きさを知れたことが、一番の収穫だったね」。最後の方には盛り上がって、お2人の感想のラリーもお聞きすることが出来た。
取材を終えて
便利さに、知った防災知識に、ただただ満足していて(上利侑也)
「元気!フォーラム」だから身体を動かしたり、防災用品の体験とかアクティブなイベントかなという予想とは反対で、会場の照明は、若干うす暗くて、少し緊張してしまうような雰囲気でした。なんか、高校の課外学習とかの非日常を思い出すような懐かしい気持ちでした。
木村教授の「わがこと意識」のお話しは、便利さを優先しながら過ごしている僕の毎日を思い浮かべながら聞くと、危機だと気付きました。特に、リメンバ−117メンバーの玉井雄貴さんも提起している「キャッシュレス」は、わがことでした。キャッシュレスは便利過ぎると感じます。電車もコンビニもスマホで支払えるから、会計の当たり前にもなっています。思い出せば、父親も母親も兄も一緒に買い物に行くとキャッシュレス会計です。防災リュックは準備しているのに、なんか違和感がありました。もし、いま災害が起きたり電気が止まってしまったらって考えると。家族みんなが何も買えないと思うと。
それから、会場外での持出し品リュック作成と、10キロのリュックの重量も体験した。備蓄したものが「逃げる時に妨げにならないか」という疑問も新たに気付きました。背負えても、逃げにくいような非現実的な防災リュックが完成してしまっていました。
守られる立場から守る立場の準備中(石堂航平)
いつくるか分からない地震を怖いと僕自身感じているけど、結局特に準備していない。だが、自主防災組織に参加している人は常に防災意識を持って活動している。これが震災を経験している人との意識の差なのかな。ただぼんやり講演を聞くだけだと結局参加しないと思うけど、今回実際に防災意識が高い人と話していたら、少し自分の地域の防災訓練に関心を持った。いざという時は自分の命は自分で守る。これから地元地域を担っていくのは僕たちの世代だからいつまでも甘えてはいけないと感じた。今日色んな方と話しているとみんな口をそろえて「私たちは阪神・淡路大震災を経験しているから」という。まだまだ僕は震災・防災を自分ごととして落とし込めていなから、経験した人のバックグラウンドを聞くのは勇気がいる気がする。現在活動しているリメンバー117は、震災を経験した世代から、若者が震災・防災に関心を持っていると思ってもらっているのか「期待しているよ」という言葉をたくさん頂けた。これから言葉に応えるように、自分なりに震災・防災へ向き合ってみたいと思う。
イベント名:自主防災組織 元気!フォーラム
日時:2019年12月7日(土)13:00〜16:30
場所:ラッセホール
参加者:取材者:上利侑也 石堂航平
▼前回の記事
兵庫県広域防災センター体験記スピンオフ(上利侑也)
「いつの間にか追いつくことをあきらめていたのかもしれない」 (石堂航平)